カナダでは、2016年に「電子渡航認証(eTA)制度」、2018年に「バイトメトリクス提出制度」を追加するなど、入国やビザに関しての手続きが増え、渡航に対する敷居が高くなったと感じている人も多いのではないかと思います。
さらに現在コロナによる規制や提出物が頻繁に変わっていて非常に複雑に見えるカナダ入国ですが、コロナの規制は、本来のカナダ入国における基本要件に一時的に追加されたものであり、これらを分別して考えると理解しやすくなります。
そこで今回は、カナダの基本的なビザの種類やその概要についておさらいします。
ポイント!
一般的に「学生ビザ」、「ワークビザ」と呼ばれますが、厳密には「Study Permit」「Work Permit」です。これらは就学または就労ができる「許可証」であり、「ビザ」とは異なります。そして「観光」も同様、入国した時にはビザは発給されず、また滞在を延長する場合に発行される用紙も「Visitor Record」というもので「ビザ」ではありません。「ビザ(Visa)」は本来、カナダへの入国許可証で、日本含む多くの国は「Visa-Exempt Country」に指定されていて、入国するための「許可証(ビザ)」は必要ありません。普段は気にする必要のないことですが、移民局の公式サイトを読む場合、この違いを知っていると理解が深まるので是非知っておいてください。
このページでは、逆に親しみ慣れている「ビザ」を使用して解説します。
Visitor観光
日本人の場合、「eTA」と呼ばれる電子渡航認証のオンライン申請さえ行えば、パスポートのみでカナダに入国でき、最長で6ヶ月滞在することができます。「eTA」の有効期限は5年間で、パスポートを更新しない限り、再申請は必要ありません。
eTA(電子渡航認証)
有効期限 | 5年間(またはパスポートが更新されるまで) |
費用 | $7 CAD |
申請方法 | オンライン(英語のみ) |
申請にかかる時間 | 数分 ~ 72時間以内 |
滞在中は、観光はもちろん語学学校などに行くことも可能ですが、プラクティカムなどが含まれるプログラムの場合は学生ビザ(+就労ビザ)が必要となります。
観光で入国し、有効期限後も継続してカナダに居たい場合は、カナダ国内からオンラインで延長申請が可能です。ただし、延長した観光のステータスでは、学校に行くことは許可されないため、学校に行くことが目的の場合は、学生ビザの申請が必要となります。
滞在期間について
滞在可能期間は、到着した日から最長で6ヵ月(180日)ですが、担当する入国審査官や移民局担当者によっては期間を短くされる場合があり、この場合はパスポートに有効期限を追記されるか、もしくは有効期限が指定された「Visitor Record」と呼ばれる用紙を渡されます。
観光の基本情報
最長滞在期間 | 6ヵ月 |
就学 | 可能 |
就労 | 不可 |
Working Holidayワーキングホリデー
「ワーキングホリデー(通称:ワーホリ)」は、協定を結ぶ特定の国に長期(主に1年)滞在しながら、観光、勉強、仕事などが経験できる制度で、各国一生に一度だけ利用することができます。同じワーキングホリデーでも国によって資格条件や応募方法は異なります。カナダのワーキングホリデーは、「International Experience Canada(IEC)」というプログラムの1つで、他に 「Young Professionals」「International Co-op(Internship)」 などのカテゴリが存在します。ただし日本人が参加できるのは、この内「ワーキングホリデー」のみとなります。
ワーキングホリデーで発行されるのは、雇用主が特定されない就労ビザ(Open Work Permit)なので、基本的には仕事内容に制限はありません。就学期間は厳密には最長6ヶ月と定められていますが、各学校の判断に委ねられているのが現実で、1つの学校にまとめて6ヵ月以上申込みしない限りチェックしようがないため、実際は合計で6ヶ月以上就学している人もいます。
カナダワーキングホリデーの基本情報
期間 | 1年 |
締切り | 6,500人(近年の傾向) |
年齢制限 | 18 - 30才 (31歳の誕生日まで) |
就学 | 可能(最長6ヶ月) |
就労 | 可能(期間制限なし) |
ビザ申請にかかる期間 | 数週間~数ヵ月(時期による) |
ビザ申請料 | 参加費 $156 + 就労ビザ $100 |
ビザ申請の流れ
カナダのワーキングホリデーの申請は抽選式となっていて、毎年大体年末から年始ごろに応募受付が開始されます。希望者はまず応募するところから始まり、その後ランダムで発行される招待状を受け取ってはじめて、ビザの申請に進むことができます。応募はオンラインで簡単に行うことができ、費用は一切かかりません。
カナダのワーキングホリデーは、数年前から定員割れ状態が続いていて、締切り直前の応募でない限り、ほとんどの人が招待状を受け取れる状態なので受付け開始後に焦って応募する必要はありません。申請から出発までの大まかな流れは下記のとおりです。
- 応募
- 招待状受け取り
- ビザ申請
- バイオメトリクス(指紋&顔写真)の登録
- Port Of Entry(POE)レター受け取り
- 航空券購入
- 出発
- 到着後、空港内の移民局で「Port Of Entry レター」と引き換えに正式なビザ発給
Study Permit学生ビザ
学校に行くことを目的としたビザ(Permit)です。学生ビザの申請を行うには、政府指定の学校(Designated Learning Institutions : DLIs)である必要があり、指定外の学校に行く場合は、学生ビザの申請はできません。6ヵ月未満の語学学校であれば指定校に限らず「観光」でも就学可能です。
通常は、下記の場合のみ学生ビザを検討すれば良いでしょう。
- 6ヵ月以上の学校に申込みする場合
- 現地で延長または進学するなどし6ヵ月を超える可能性がある場合
- 受講するプログラムにCoop などプラクティカムが含まれる場合
- 受講するプログラムがOff Campus 対象で就学しながらアルバイトをする場合
学生ビザの有効期限は、申込みした学校のプログラム期間をカバーする形で数週間から数ヵ月の猶予が付いて発行されます(6ヶ月の学校なら8ヶ月など)。もし現地で別の学校に進学、または期間を延長する場合などは、カナダ国内からオンライン申請が可能です。
学生ビザの基本情報
期間 | 学校の期間 + 数週間~数ヵ月の猶予 |
就学 | 可能 |
就労 | 学校/受講するプログラムによる |
ビザ申請にかかる期間 | 平均1~数週間(時期による) |
ビザ申請料 | $150 |
学生ビザでの就労
学生ビザは、学校に行くことが目的のため、基本的には就労は認められていませんが、学校または受講するプログラムが特定の条件を満たしている場合のみ、条件付きで働くことができます。
Off Campus
就学中の生活費を賄うなどの目的のために、特定の条件を満たしている場合に限り、学生ビザのみで就学期間中に最大20時間/週のアルバイトが可能です。発行された学生ビザに「就労可能」と記載されます。下記が Off Campus の条件で、全てを満たしている必要があります。
- 政府指定の学校でフルタイムプログラム受講
- 専門学校や大学などの専門プログラム受講(ESL以外)
- 6ヵ月以上のディプロマ/サーティフィケートプログラム受講
就労が許可されるのは、学校のプログラムが開始されてからで、開始前は厳密には認められていません。また、働くには「SIN(Social Insurance Number)」が必要となりますので、到着後にオンラインまたは最寄りのオフィス( Service Canada Centre )に行って申請する必要があります。
Work off campus as an international student
www.canada.ca/en/.../study-canada/work/work-off-campus.html
Co-op
受講するプログラムに「プラクティカム(就業経験)」が含まれる場合、プログラム期間の50% または授業と同期間、以内の範囲で働くことが可能です(プログラムの期間が計48週間だった場合は24週間など)。Co-opは、学校が提供するプログラムであり、ビザの種類ではありません。Co-opを利用するには、専門学校などのCo-opプログラムに申込みする必要があります。
プログラム例
- Hospitality Management Co-op Diploma 24 Weeks(12週間授業+12週間Co-op)
- International Business Management Co-op Diploma 12 Weeks(6週間授業 + 6週間Co-op)
通常の学生ビザと同様、学校から入学許可証が発行されますが、Co-opの場合は一緒に「プラクティカムレター」が発行され、それらを学生ビザの申請時に一緒に提出することで、「学生ビザ」と「就労ビザ」両方が発行されます。就労ビザの雇用主はあくまで学校となるため、就労は学校が許可する職種(受講したプログラムに沿った職種)である必要があります。なお、上の「Off Campus」の条件を満たしていれば、授業の期間中も最大週20時間の就労が可能です。語学学校などの英語プログラム(ESL)には Co-op はありません。
Work as a co-op student or intern
www.canada.ca/en/.../study-canada/work/intern.html
Post Graduation
公立の専門学校や大学で、条件を満たすプログラムを修了した後に申請できる「就労ビザ」です。日本人からは「ポスグラ」と呼ばれています。 発行される就労ビザは、雇用主が指定されない「Open Work Permit」となるため、希望の職種で働けるのが特徴です。 下記が Post Graduation の条件で、全てを満たしている必要があります。
- 政府指定の公立の学校でフルタイムプログラム受講
(一部、同等のプログラムを扱う私立の学校も対象) - 8ヵ月以上のプログラム受講
- 修士課程、ディプロマ、サーティフィケートプログラム受講
Post Graduation で発行される就労ビザは、 雇用主が特定されない就労ビザ(Open Work Permit)なので、仕事内容に制限はありません。通常は受講したプログラムに関連する職業に就くのが一般的です。
また、発行される就労ビザの期間は受講したプログラムの期間によって異なり、最長で3年間となります。たとえば、8ヶ月のプログラムの場合は、8ヵ月の就労ビザ、1年6ヶ月のプログラムの場合は 1年6ヶ月、2年のプログラムの場合は3年の就労ビザを取得できます。
Post Graduation の就労ビザの期間
受講したプログラム期間 | ビザの期間 |
---|---|
8ヵ月~2年未満 | 受講したプログラムと同じ期間 |
2年以上 | 3年 |
About the post-graduation work permit
www.canada.ca/en/.../study-canada/work/after-graduation/about.html
学生ビザ申請の流れ
ビザの申請には、学校の申込み+支払い(学校による)が完了した後に学校から発行される入学許可証(LOA:Letter Of Acceptance)が必要となるため、留学を決断してから行う最優先事項は学校の検討となります。そこから出発までの一般的な流れは下記のとおりです。
- 学校の検討
- 学校の申込み&支払い
- ビザの申請
- バイオメトリクス(指紋&顔写真)の登録
- Port Of Entry(POE)レター受け取り
- 航空券の購入
- 出発
- 到着後、空港内の移民局で「Port Of Entry レター」と引き換えに正式なビザ発給
Biometricsバイオメトリクスの提出
2018年末に追加された比較的新しい要件で、学生ビザや就労ビザなどの申請の際に、個人を識別する目的として、「指紋」と「顔写真」の提出が必要となります。提出は、カナダ移民局指定の「バイトメトリクス登録オフィス」に直接行って手続きする必要がありますが、こちらのオフィスは日本国内には東京と大阪2つのみとなります。遠方の人にとってはかなりの負担になっています。
バイオメトリクスの提出は、ビザの申請を全て完了した後、移民局より「バイオメトリクス要請レター」を受け取ってから、登録オフィスに訪問の予約をする流れとなります。バイオメトリクスの提出が完了すると、その情報は自動的に移民局に送られ、あとは移民局からビザの最終許可証「Port Of Entry(POE)」が発行されるのを待つのみとなります。
バイオメトリクスの基本情報
有効期限 | 10年 |
費用 | $85 CAD |