海外在住日本人の悩みの1つに、日本の一部のウェブサービスにアクセスできないというものがあります。たとえば日本のドラマやバラエティ番組が無料で見れる「TVer(ティーバー)」や「GYAO!(ギャオ)」など。これは、ウェブサービス側でアクセス元を日本のみに限定していることが原因で、VPN(Virtual Private Network)を利用することで、この問題を解決できます。また「Netflix」など、アクセス元を判定してその国向けのページを表示するサービスでも、VPNを使用すれば、希望の国の「Netflix」にアクセスできるようになります。
VPN(Virtual Private Network) とは?
VPN(Virtual Private Network)とは、インターネット上に仮想的な専用線ネットワークを構築し、セキュリティ面における安全なデータのやり取りを実現できる技術です。VPN技術により、物理的な専用線に近い安全なデータ通信を、手軽に低コストで実現することができるようになります。
VPN の役割
VPNはセキュリティ目的で利用するものだと思われていますが、実は多くの一般人はセキュリティ云々よりも、他の目的で VPNを使用しているのが現実です。それが、アクセス元の偽装です。
一部のウェブサービスでは、様々な理由でサービスを特定の国の人に限定している場合があり、そのアクセス元の特定には直前に経由したホスト情報が使用されます。たとえばカナダから普通の方法で日本のウェブサービスにアクセスした場合、日本のウェブサービス側では、カナダのプロバイダー(Shaw CableやTelus など)のホスト情報がアクセス元として記録されます。一方、VPNを使用した場合は、そのVPNの情報がアクセス元となるため、日本のVPNを利用すれば、アクセス元の国は日本となります(下記イラスト参照)。
同様の仕組みとして、一昔前までは、「Proxy(プロキシ) 」が一般的でしたが、セキュリティの観点からも、今ではアクセス元の偽装や匿名性を高める目的にも、VPNが広く使用されています。
無料のVPNサービスプロバイダー「VPN Gate」
VPNに関してインターネットで検索すると、無料で利用できるVPNサービスプロバイダーを紹介する記事がたくさん見つかりますが、実はそのほとんどは紹介して報酬をもらうアフィリエイト目的。基本的には有料のVPNサービスで、機能や転送量に制限を設けた無料お試しプランを紹介しているだけに過ぎず、無料では目的を達成できない場合も多いというのが現実です。
しかし中には、機能や転送量に制限もなく完全に無料で使用できるサービスもあります。それが今回紹介する「VPN Gate」です。VPN Gate は、2013年に立ち上げられたサービスで特別新しいものではありませんが、有料のものばかりが紹介されてしまい、まだまだ知らない人が多いのが現実です。
「VPN Gate」は、筑波大学が研究/実験目的で提供しているVPNサービスで、世界中のボランティアで提供されているVPNサーバーを利用できる仕組みです。
「筑波大学」と聞くと、その名前だけで安心してしまいがちですが、本プロジェクトでは誰でもボランティアとしてVPNサーバーの提供者になることが可能なため、悪意を持ってボランティアに参加している可能性があるなど、必ずしも全てのVPNサーバーが安全とは限らないというのがデメリットとして挙げられます。しかし、一般向けに公開されているウェブサイトや動画を閲覧することが目的であれば、それほど深刻になる必要はないでしょう。
アクセス元を制限しているサービスの中には特定のVPNをブロックしているサービスもあるため、VPN経由だからといって、必ずしも全てのサービスを利用できるわけではありません。
「VPN Gate」のVPN設定方法
VPN接続を行うためには、VPN クライアントと呼ばれるソフトウェアが必要となりますが、最近のデバイスには標準でそれらの機能が搭載されているため、追加のソフトウェアは必須ではありません。今回は Windows 11 での設定方法を紹介します。Windwos 10もほとんど同じです。
Windows以外のデバイスでの設定方法は公式サイトを参照ください。
iPhoneやAndroidの設定方法も紹介されています。
VPN Gate 公式サイトより希望のVPN接続アドレスを選択
VPN Gate 公式サイトの「VPNサーバー一覧」ページを開きます。
今回はWindowsやMacなどほとんどのOSに標準で搭載されている「L2TP/IPsec VPN クライアント」を使用するため、一覧の中から[L2TP/IPsec]に対応したVPNを選択します。よくわからない場合は一番上のものにしておけば良いでしょう。国を指定したい場合は希望の国のVPNを選択します。
使用したいVPNが決まったら、DDNS名をコピーしておきます(例:public-vpn-50.opengw.net)。
[スタート]から[設定]を開く
[ネットワークとインターネット]から[VPN]を開く
[VPNを追加]をクリック
VPN情報を入力
上から順番に入力し保存します。
- VPN プロバイダー Windows(ビルトイン)
- 接続名 最初にコピーした DDNS名 を貼り付け
- サーバー名またはアドレス 自動
- サインイン情報の種類 ユーザー名とパスワード
- ユーザー名(オプション) vpn
- パスワード(オプション) vpn
この方法を繰り返せば、VPNを複数登録しておくことができます。
VPN接続方法
上の設定が完了すると、あとは必要な時に簡単にVPNに接続/切断することができるようになります。
タスクバーのネットワークアイコンをクリック
[VPN]をクリック
希望のVPNをクリック
[接続済み]となったら接続完了です。この後の接続は全てVPN経由となります。
VPNから切断する場合も同じ手順です。
日本のドラマやバラエティ番組が見れるサイト
下記など日本国内から発信されている大手テレビ番組配信サービスは大抵アクセス元を日本国内のみに制限していたりします。
- TVer/ティーバー (tver.jp)
日本のドラマやバラエティ、スポーツ、アニメ番組が見れる日本のサービス。日本からのアクセスのみ閲覧可能。VPNを経由で一度再生すれば、すぐにVPNを切断しても継続して閲覧可能。 - GYAO!(gyao.yahoo.co.jp)
日本、韓国のドラマ、バラエティ、音楽、スポーツ、アニメ番組などが見れる日本のサービス。日本からのアクセスのみ閲覧可能。VPNを経由で一度再生すれば、すぐにVPNを切断しても継続して閲覧可能。
しかし、日本のドラマや映画に関しては日本国外から発信しているところも多く、これらの場合は無料でしかも大抵VPN不要でアクセスすることができます。今回は、その中から比較的安定して見ることができる動画サイトに絞って紹介します。
一昔前までは、「Dailymotion」や「パンドラTV」などの動画共有サイトにアップロードしたものを見るのが一般的でしたが、これらの場合、著作権の問題で運営側に削除されてしまうため、古い動画になればなるほどリンク切れが多かったのが現実です。しかし最近では、著作権侵害なんてものが通用しないサーバーに保存し公開しているサイトも増えてきているため、これらの場合、古い動画も比較的安定して見ることが可能です。
- Watchasian (watchasian.cx)
過去のアジアのドラマや映画など豊富。言語は英語。VPNの有無は動画ファイル保存サーバーによる。 - Gimy(gimyvod.cc)
主に中国、韓国、日本のドラマ。言語は中国語。「日劇」が日本のドラマ。VPNの有無は動画ファイル保存サーバーによる。 - PttPlay(pttplay.cc)
アジアのドラマや映画、アニメなど。言語は中国語。「電視劇」がドラマ、「電影」が映画、「動漫」がアニメ。VPNの有無は動画ファイル保存サーバーによる。
「Watchasian」「Gimy」「PttPlay」などは、再生のページで動画ファイルを取得するサーバーを選択できるようになっていますが、選択するサーバーによってはアクセス元の制限をしているようです。エラーとなる場合は、日本のVPNに接続するなどして試してみてください。